IT企業における、障がい者雇用の実態調査(前編)
<調査サマリー>
1.約1割の企業、障がい者の採用条件を定めずに採用
2.直近1年で障がい者雇用をしていない企業、採用していない理由は「採用基準に合う人材がいないから」が約4割で最多
3.約4割の企業が、直近3年以内で障害者雇用に対する取り組みを変える可能性があると回答
1.約1割の企業、障がい者の採用条件を定めずに採用
直近1年間で障害者雇用を行っている企業は151社となり、実際に採用した人数は各企業「1〜2名」が最も多く、5割となりました。
採用時に決まっていた項目で最も多かったのは「雇用形態(80.1%)」となり、次いで「給与(65.6%)」「職種(52.3%)」と続きます。※複数回答
企業規模1000人以上の企業群では、7割以上が「雇用形態」と「給与」を決定した状態で採用をしています。また、約1割の企業は障がい者の採用条件を定めずに採用をしていることも見受けられました。
規模による差が顕著なのは「給与」のみとなり、他の項目に関しては、規模によって差が生じません。採用項目がすべて決まっていなくても雇用をはじめることは可能です。
2.直近1年で障がい者雇用をしていない企業、採用していない理由は「採用基準に合う人材がいないから」が約4割で最多
直近1年以内で障害者雇用をしていない企業61社に「採用していない理由」を聞いたところ、最も多かったのは「採用基準に合う人材がいない(41.9%)」となりました。次いで、「既に雇用率を達成している(33.9%)」「任せられる業務が見つからなかった(24.2%)」と続きます。※複数回答
「採用基準に合う人材がいない」ことで採用に苦戦している割合が高いのは、従業員数が500人未満の企業群です。即戦力を求め、高い要件で障がい者募集をしている可能性があることが考えられます。※複数回答
3.約4割の企業が、直近3年以内で障害者雇用に対する取り組みを変える可能性があると回答
約4割の企業が、直近3年以内で「障害者雇用に対する取り組みを変える可能性がある」と回答しました。
今後の動きで検討していることには、「積極的な雇用を進めるための動きを学び、社内展開したい」といった前向きな回答が多く、他には「男女比率にも配慮した雇用」や「在宅勤務を前提とした雇用」「社員への理解促進の動き」があげられました。※自由回答
「3年以内で変わる可能性がある」と回答した企業規模群で最も多かったのは、従業員数が1000人以上の企業となりました。
大企業においては、常用雇用者数が大きく増加しやすいことや、法改正によって雇用率が引き上がることによる障がい者雇用への影響が大きいことが考えられます。国の方針や会社の採用方針に合わせ、その都度、障がい者雇用の方針を変更していることが可能性として考えられます。
<事業責任者小野寺からの一言>
今回の調査結果から、雇用条件が完全には定まっていない中で採用活動を進めている企業が大半を占めていることがわかりました。これは、人に合わせた雇用条件を設定することに繋がるメリットがあり、就業における柔軟性を高める効果があります。
反面、雇用条件が一切定まることなく採用活動を行う企業も1割程度存在しています。これだけ条件が不明確であると入社前後においてトラブルとなりやすく、同時にリスクを抱えていることになります。また、一定の労働条件については法令上も提示が必須とされていますので、最低限、そのような項目については事前に確定し、候補者へ提示する必要があります。
また、4割の企業では採用基準に合う人材がいないことで障がい者雇用が進んでいない実態も見受けられました。厚生労働省が発表している障害者雇用状況のデータ※において、産業別実雇用率、産業別達成企業割合の両方で情報通信業界は15種類の産業種別のうち下位3位以内に入っており、業界特有の雇用の難しさが示唆されています。
IT領域においては基本的な募集要項は設定しつつ、あまりに限定的な要件とならないようにすることが肝となります。候補者の人物像を元に、採用を検討することが雇用を進める上で鍵となるでしょう。
※厚生労働省『令和元年 障害者雇用状況の集計結果』https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000580481.pdf
<調査概要>
調査対象:障がい者雇用に関わるIT企業の採用担当者213名
集計期間:2022年6月16日~2022年6月20日
調査方法:Webアンケート調査
実査委託先:楽天インサイト株式会社
有効回答数:213名