2025.08.20

調査リリース 医療・介護・ヘルスケア領域

看護師のUIJターン転職、 配偶者・パートナーの事情が約半数に影響、 家族との時間に満足する一方で“給与減”が課題に

看護師のUIJターン転職、 配偶者・パートナーの事情が約半数に影響、 家族との時間に満足する一方で“給与減”が課題に

地域偏在の是正に向けた「看護師のUIJターン転職」に関する実態調査

 

 レバウェル株式会社が運営する、看護職を対象とした求人・転職サービス「レバウェル看護は、全国の看護師に対して、「Uターン・Iターン・Jターン転職 *1」に関する実態調査を実施しました。本調査は、UIJターン転職を経験した看護師および、UIJターン転職を検討していない看護師の計438名を対象としています。

 

調査の全文は以下からご覧いただけます。

https://kango-oshigoto.jp/document/research/nurse-uij-turn-survey.pdf

 

< 調査サマリー >

1.看護師のUIJターン転職理由「実家や家族の近くで暮らしたかった」が最多、配偶者・パートナーの事情が影響した人は約半数

2.UIJターン転職後「満足」と答えた看護師は「不満」の約3倍、生活環境を重視する層ほど高評価

3.6割以上の看護師がUIJターン転職で「給与減少」を実感、職場の医療提供体制・キャリア形成機会にも課題

 

1.看護師のUIJターン転職理由「実家や家族の近くで暮らしたかった」が最多、配偶者・パートナーの事情が影響した人は約半数

 UIJターン転職を経験した看護師に主な理由について聞いたところ、最も多かったのは「実家や家族の近くで暮らしたかった」(39.2%)という回答でした。次いで、「ワークライフバランスを見直したかった」(26.3%)、「希望条件に合う求人が地方にあった」(16.1%)が続きました。

 また、配偶者・パートナーの事情がどの程度関係したかを尋ねたところ、「主なきっかけだった」が28.1%、「一部関係したが、主なきっかけではない」が18.0%で、全体の46.1%となる約半数が何らかの形で影響を受けていたことがわかりました。

らの結果から、看護師のUIJターン転職は、本人の働き方や暮らしの希望に加え、パートナー・家族との関係性やライフステージの変化を含む、ライフプラン全体を見据えた選択であることがうかがえます。また、このような選択が可能である背景には、国家資格である看護師免許を持ち、全国的に需要が高く、地域を問わず就業しやすいという職業特性も影響していると考えられます。

 

2.UIJターン転職後「満足」と答えた看護師は「不満」の約3倍、生活環境を重視する層ほど高評価

 UIJターン転職後の満足度を聞いたところ、「大変満足」が10.6%、「やや満足」が29.5%となり、全体の40.1%が転職に満足していることがわかりました。一方で、「やや不満」は10.6%、「大変不満」は6.5%で、不満を感じている人は全体の17.1%となり2割以下にとどまりました。この結果から、UIJターン転職を経験した看護師の多くが転職を肯定的、もしくは中立的に受け止めていることが明らかになりました。 

 特に、「子育てに適した環境を求めていた」「自然環境の良さに魅力を感じた」「結婚や出産を機に生活環境を見直したかった」といった、“生活環境”に関わる理由で転職を選択した層では、満足度が相対的に高い傾向が見られました。

 また、UIJターン転職をして「よかった」と感じている点を聞いたところ、「家族との時間が増えた」(39.6%)が最多となり、「勤務時間や休暇など、働き方の柔軟性が高まった」(27.6%)、「生活費など経済的負担が軽くなった」(23.5%)が続きました。

 これらの結果から、家族との時間や働き方の柔軟性、生活費の軽減といった“生活の質”の変化が、UIJターン転職の満足度を左右する要因であることが示唆されます。

3.6割以上の看護師がUIJターン転職で「給与減少」を実感、職場の医療提供体制・キャリア形成機会にも課題

 UIJターン転職後に困った・戸惑った点を聞いたところ、最も多かったのは「給与水準が下がった」(49.8%)という回答でした。さらに、実際の給与の変化状況を聞いたところ、「給与が下がった」と回答した看護師は全体の60.8%にのぼりました。

 都市部から地方への移住により、物価や家賃などの生活費は相対的に抑えられる傾向があるものの、給与水準の低下は多くの看護師にとって明確な課題であり、大きな不安材料となっていることが示されています。

 また、「病院/施設の設備や医療体制が十分でなかった」(24.0%)、「専門性の向上やキャリアアップの機会が減った」(18.4%)といった回答もあり、職場環境やキャリア形成の面でも課題が見られました。看護師のキャリア形成や専門性の向上機会は、職場環境に左右されやすいため、都市部と地方の医療提供体制の差は、スキルアップやキャリアの選択肢に影響を及ぼしていることが示唆されます。

 加えて、「交通や商業施設へのアクセスが不便」(21.2%)といった、生活面での不便さを挙げる声もあり、生活インフラや日常の利便性の面でも課題があることがうかがえます。

 これらの結果から、UIJターン転職には生活環境の向上といった利点がある一方で、特に給与水準の低下は看護師にとって深刻な課題となっているほか、地方特有の複合的な課題が存在していることが明らかとなりました。

<レバウェル株式会社 看護師紹介事業 部長 古谷 直士のコメント>

 日本では超高齢化の進行に伴い、医療業界全体で人手不足が深刻化しています。中でも、地域ごとの人材偏在は大きな社会問題です。看護師も例外ではなく、都道府県別に人口10万人あたりの就業看護師数 *2 を見ると、最も多い高知県と最も少ない埼玉県では、2倍以上の差があります。こうした偏在により、看護師が不足している地域の医療機関では、1人当たりの業務量が増加し離職の一因となることがあります。その結果、地域によっては必要な医療サービスを安定的に提供し続けることが難しくなるおそれもあり、地域ごとの適正な人材配置が課題となっています。

 こうした背景を踏まえ、地域を越えた人材移動を伴う「UIJターン転職」に着目し、その実態を明らかにすることを目的に本調査を実施しました。調査結果からは、看護師のUIJターン転職が単なる勤務地の変更にとどまらず、配偶者・パートナーの事情やライフステージの変化など、ライフプラン全体を見据えた選択であることが分かりました。また、転職後の満足度が高い一方で、「給与水準の低下」や「キャリア形成への不安」といった、地方特有の複合的な課題も明らかになりました。

 今後、UIJターン転職を看護師の地域偏在を是正する有効な手段として機能させていくためには、こうした実態を正しく把握したうえで、看護師が安心して地域を越えた転職を選択肢として検討できるような環境整備が不可欠です。

 レバウェル看護では、看護師一人ひとりのキャリアとライフスタイルに寄り添いながら、地域ごとの専任担当者と、そのエリアに精通した法人担当者が連携する体制のもと、地域の特性や事業所のニーズに応じた最適なマッチングを支援しています。今後も、看護師の人材不足や偏在問題の解消に向け、医療業界全体が抱える課題解決に貢献してまいります。

 

<調査概要>

調査対象:UIJターン転職を経験した看護師、およびUIJターン転職を検討していない看護師

調査時期:2025年7月14日~7月18日

調査方法:インターネット調査

有効回答者数:438名

調査主体:レバウェル株式会社

実査依頼先:GMOリサーチ&AI株式会社

 

 

*1:本調査における「UIJターン転職」は、以下のとおり定義しています。

・Uターン転職:地方出身者が都市部へ移住した後、再び地元(地方)に戻って転職すること

・Iターン転職:都市部出身者が、地方へ移住・転職すること

・Jターン転職:地方出身者から都市部へ移住した後、地元ではない地方に移住・転職すること

【都市部】三大都市圏(東京圏:東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県/名古屋圏:愛知県・岐阜県・三重県/大阪圏:大阪府・京都府・兵庫県・奈良県)/【地方】三大都市圏以外の全都道府県

 

*2:厚生労働省 令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況

 「都道府県別にみた人口10万対就業保健師等数」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/24/dl/kekka1.pdf

 

 

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